2016年5月5日木曜日

インフレと低金利_8 :  景気回復でも金利は上がらない

(1)複数の要因が重なって異常な低金利が出現
日欧の債券金利はマイナスが多くなった。

マイナス金利の債券に投資すれば、満期時に受け取るお金は減ってしまう。
それでも、債券市場から資金が逃げ出さない。
逃げ出さないどころか、現状は債券に投資する金額は増加の一途をたどっている。

2016年4月19日の状態、緑枠内がマイナス金利


(2)異常に思える低金利を長期化させている要因
異様に思える低金利だが、それが長期化しているのには「それ相応の理由」がある。
今回のレポートNo.1~7で述べたことを整理すれば、以下の3つの理由に集約される。


1:お金を欲する需要サイドの要因
新興国、資源エネルギー、重厚長大産業のバブルが崩壊して製造業を中心に過剰設備が顕著になり、新たな投資に付随する資金需要が激減した。

バブル期に膨らませた負債も現在の経済情勢では過剰だと判断する企業が増え、債務の返済を進めており、企業のネット(借入マイナス返済)の資金需要は低水準で推移している。



2:お金を提供する供給サイドの要因
バブル期の投資家はリスク・テイク意欲旺盛で、多少危なっかしい金融商品や割高と思える投資案件であっても意に介せず、リスクの高い金融商品に湯水のごとく資金をつぎ込んだ。

しかし一旦バブルが崩壊すると、投資していたポジションが大損をしてしまった。
その後は、羹に懲りて膾を吹く状態に急変してしまい、現在は極端にリスクを回避するようになった。
国債などのように
安全と思われる債券市場にしがみついている。しかも債券市場に滞留する残高はマイナス金利などを意にも介さず増え続けている。

3:中央銀行サイドの要因
アベノミクスのなかでも黒田日銀の低金利政策はパワフルだ。
異次元緩和、リスク資産購入(株式ETFJリート)、マイナス金利の導入と市場の金融緩和はもう限界だという限界論を跳ね返して、前代未聞の緩和政策(QEを進めている。


<< 結論 >>
上記の3ファクターが相互に関連しながら金利を大幅に引き下げてきた。
それゆえ、現在の異常に思える低金利は「異常ではなく、当然の帰結」である。


換言すれば、異常に思える低金利が上昇に転ずる時は、上記3つの要因に変化が生じた時だろうし、その時は金利が上昇に転ずるのは当然の摂理だと理解すべきだろう。

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