2013年8月30日金曜日

需要と供給のミス・マッチが解消したメディア業界

顧客の需要を正確に測定し、それにフィットした商品やサービスをいち早く提供する。
ビジネスの基本だ。

競争が激しいほど、最大需要を獲得しようと各社が競って、顧客が喜ぶ商品やサービスが大量に提供される。
需要と供給がバランスし、資源(人・モノ・金)の最適配分が生まれる。

昔のメディアの需給関係は上記とは異なる構造だった。
19世紀、20世紀の新聞、ラジオ、TVなどの情報サービスに対する需要は、
1:高度、専門的、政治経済、教育・芸術、真面目・・・・少ない需要
2:大衆娯楽・・・・多い需要
3:エログロ、ナンセンス、麻薬、自殺、爆弾・・・需要不明
、という分布が平常状態と推定される。

これに対する供給は、
1:高度、専門的、政治経済、教育・芸術、真面目・・・・やや多目の供給
2:大衆娯楽・・・・やや少なめの供給
3:エログロ、ナンセンス、麻薬、自殺、爆弾・・・提供自粛
、という状態だった。

この背景は、
1:良いものを提供したい、国民のレベルを引き上げたい、という使命感
2:供給(特に電波)が実質意的に独占で過少供給状態なので、読者・視聴者は、ソレを受け取る以外に選択肢が無かった
3:過少供給によってメディアは超過収入を享受できたので、少ない需要「高度、専門的、政治経済、教育・芸術、真面目」分野にも、需要以上の予算を配分できた。
、という事だった。

21世紀になって、インターネットが飛躍的に発達し、供給制約が急速に縮小している。
「大衆娯楽に対する膨大な需要」に対して、インターネットやケーブルTVなどが大規模に進出した。
「エログロ、ナンセンス、麻薬、自殺、爆弾」という暗部にも、インターネットが進出した。
同時に需要測定技術が高度に発達した。

これらの要因に背中を押されるように、メディア各社は「存在する需要」に合わせた番組を素直に提供する姿勢になった。
換言すれば、「過去から続いていた需要と供給のミス・マッチ」が解消したのだ。
これをメディアの堕落と短絡的に糾弾するのは片手落ちだろう。
「過少供給+超過収入」がもたらしていた「高度、専門的、政治経済、教育・芸術、真面目」分野に対する需給以上の予算配分は二度と戻ってこないと判断する。

例外は、
1:NHKなど強制的な収入源を確保できるメディア。
彼らは、べき論で番組を提供する事が可能だ。
2:特定分野に特化し、long tailを活用することでニッチに活動するメディア。
ここは会員制、有料化が進むだろう。

SNSの伸長は、上記の動きと軌を一にしていると思う。

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