2017年2月28日火曜日

星野リゾート、星野佳路氏の講演メモ

2月23日の星野リゾート、星野佳路講演メモ
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星野リゾートは、創業103年目
私(星野佳路)は4代目で、1991年に社長に就任した。



当時はリゾート法が出来て、あちこちに大型リゾート施設が乱立を始めたころだった。
私(星野佳路)は、供給過剰を予想し、会社としては運営受託に特化することを決めた。

やらない決定をしたのだ、
新規開発しない
新規に物件を所有しない。

しかし、10年間は受託の実績が出なかった
2001年に初受注した。2004年にはトマムを始めた。

現在は37物件を受託し、売り上げは460億円


星野リゾート は現在は、国内35施設と海外数カ所の運営をしている。

当社が目指しているのは、脱commodityである。

振り返れば、1980年代はマリオット、ハイアット、ヒルトンがブランドをベースに営業していた。
その後各社は買収戦略で規模を拡大し、現在は各ブランドが20以上のブランドを傘下に保有している。

しかし、その内情は、混乱状態だ。
オーナーの事情で傘下のホテル名は統一できずにバラバラだが、サービスの中身はどこも同じ金太郎飴に陥っている。

ホテル物件のオーナーからすれば、どこも同じサービスなら、「安価な運営会社に委託」する方向へと経営決定するのは当然の流れだ。

Interstate Hotel&Resort のようなThird Party運営会社に委託するようになったのが現状だ。
しかも、マリオットもハイアットもヒルトンも同一地域の運営を同社に委託する状況が生まれ、その結果同じ地域ならどのブランドのホテルでも同じようなサービスになってしまった。
 
マリオット、ハイアット、ヒルトンのすべての運営を統括する地域統括マネージャー一人同一人物が3ブランドすべての運営の責任者という状況も出現している。

そうなれば、顧客に対しては「安い価格しか訴求力がない。サービス内容が同じなのだから。

顧客からすれば、ブランドを信頼できない、ブランドでサービス内容区別できない。
しかも、場所が変われば同一ブランドでもサービスの内容やレベルが異なるので、ネットで個々のホテルの評価を検索して確認しなければ自分の希望を満たすホテルの予約できなくなった

ブランドに信頼があれば評価をネットでチェックしない
ブランドは、事前の約束(顧客の期待)を果す事で確立される
そうなれば事前にネットで評価をチェックする必要がない

星野リゾートは、他社に真似されない、真似る場合でもライバルが現在の彼らのビジネス・モデルを変えるしかないという「トレード・オフ」に追い込むというビジネス・モデルを採用している

従来のホテルは、調理場、清掃、会計など多くの専門職が寄り集まった経営だが、これでは一日の中で「担当業務が無いので何もしないアイドル・タイムが多くなる。また、他の事に配慮しなくなる。結果としてコストアップになる。



星野リゾートは多機能職が運営する手法を採用している



多機能職に切り替える際のハードルは、専門集団という身分制度を破壊する必要がある点だ



星野リゾートは実績(顧客満足度と収入増加)を示してきた


ただ問題も見えている。 
地方で優秀な人材を長期間雇用するのが困難だという問題がある


「界シリーズに対する需要は伸びている


リッチな時間を過ごしたい、高い満足を得たい
そんな需要が盛り上がっている。
今はそういうホテルを新築して増加させる時期になったと判断している

全国に評価の高い温泉が30個ある
各温泉に200室のホテルを建設する
全国に6000の「界」ができる


「界」はコンセプトを明確化している
やらない事を決めた
宴会やらない
ブライダルやらない
団体やらない
顧客Targetを明確にしている



集客も自分でやる
ネット旅行予約だが、楽天と一休をやめた
自社HPからの予約が、51%まで増えてきた
スマホの時代なのでスマホから簡単に予約できるようにしている
航空券とセットで予約できるなど予約の利便性も高める工夫も頑張っている


高級温泉旅館に対する需要は不変だ
火山の爆発の危険があるので箱根がダメなら湯河原というように、顧客は何処の温泉に行っている

だから一箇所に集中させるのではなく、30箇所に分散して6000室の「界」にするのだ

温泉+食事=温泉旅館
これが基本だ
オーベルジュは温泉というキラー・コンテンツが無いので当社ではネガティブに考えている

要は食事にプラスするキラー・コンテンツが必要なのであり、温泉以外の何か別のキラーコンテンツが成功の秘訣だと思う

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社会制度をゆり戻しているポスト冷戦

1945年以降の冷戦で福祉社会が促進された。
多くの先進国では、現行の政治制度、財政制度では維持不可能なレベルまで、福祉が高まった。

福祉の上昇は、均質社会の幻想も醸成した。

冷戦が終了は、この大きなトレンドの修正、反転を起こしている。

福祉上昇が止まる。
維持不可能だからだ。

社会が均質性を上昇させるという思いも縮小する。
経済格差が拡大するからだ。


かつての社会構造の方向への揺り戻しが起こっている
階層社会、クラス社会、身分社会

均質なインターネットが、グループごとの
SNSへ移行したのも、そのトレンドに合致する

参考ブログ記事
< 長期的な視点 >
先日10年以上のお付き合いのある米国人エコノミストと話をしていたら、彼が以下のことを述べました。年金などに代表される社会福祉制度は、ある意味では東西冷戦の産物であります。当時は、自分の陣営はこんなに暮らしやすい社会だと見せる事が政治的に重要でした。その社会福祉制度が計算上成り立たない仕組みであったとしても、冷戦の間だけでも維持する必要がありました。しかし、もう冷戦が終了し、維持が不可能なものを続けることが政治的に不要となりました。政治的に不要なものは、経済的に成り立つレベルまで縮小されるか、廃止されます。われわれは、政治のショーが終わった事を認識する必要があるのです。


2017年2月19日日曜日

US株:2017年は、温かくなると調整が来る普通の年

投資家は懸念を持ちつつ「匍匐前進」状態だと観察される。
懸念を抱えながらなので、相場はバブルとは程遠いし、それなりに「打たれ強い」
だから、じり高になる。

とは言え、不安の中を前進しているから、ニュースや事件には過敏に反応する

FRBは、これまで2015年12月、2016年12月と2回の利上げを実施した。


利上げが行われると、上昇が止まったり調整局面が来る。
過去2回の利上げに対する反応もそうだった



次の利上げは、3月か5月のFOMC時に実施されるだろう。

下記は、FOMCのスケジュール

利上げの実施が、3月にせよ5月によせ、季節的には「Sell in May」だからという言い訳が立つ時期だ。

2月から始まったトランプ相場の第二フェイズが小休止を迎えるころ合いと利上げが、良いタイミングで重なる



だから、2017年は、普通の季節性という相場のリズムは妥当する「普通の年」だと思う。

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2017年2月9日木曜日

米国社会の変化と大統領選挙



政治勢力としての宗教右翼の台頭
1960年代以降盛んになった女性の権利の擁護と向上の運動〔フェミニズム〕の中でも、妊娠中絶の権利、同性愛の解禁、マリファナ解禁などに心情的に抵抗する保守的なグループは多かった。

彼ら彼女らはTVを通じて保守的な宗教を唱える宗派に賛同し吸収されていった。それに目をつけた共和党が、元来は民主党支持者であった彼ら彼女らを宗教を通じて共和党に取り込んでいった。

負け組労働者の民主党離反
自動車や鉄鋼などの産業が盛んな地域は民主党の支持基盤だったか、アジア勢の追い上げで、産業的には負け組に落ちていった。今ではRust Belt(負けて朽ちて錆だけが残った地域)と呼ばれるようになった。

巨大工場で比較的高い同一賃金を享受していた労働者たちは、アジア勢に負けた後は、サービス産業に吸収される事になったが、相対的には賃金水準は低下し、かつ労働者間の賃金格差が拡大した。

経済のサービス化は経済格差を拡大させる。
製造業は企業規模が大きく、同一賃金の労働者を多く発生させる。また労働組合など企業との賃金交渉も容易だ
半面、サービス産業は多数の小規模企業という状態であり、製造業労働者がサービス産業に移行することは同一賃金から賃金格差へと変化することになる、仮に移行前後で平均が同じであっても

民主党の大統領の時代には、有権者の大多数を締める中流とそれ以下の人々の意識は、富裕層からの配分を進める民主党の政策に満足感を示す傾向があった。
しかし、オバマ政権下の8年間では、それが起こらなかった。
オバマが心血を注いだ医療保険であるオバマ・ケアをもってしても評価は改善されなかった。
就任当初の
期待裏切られた格好だ


生活改善ファースト
中流およびそれ以下の有権者、特にRust Beltの労働者たちは、自分たちの生活を目に見える形で良くしてくれる政治家を求めるようになっていった。
その受け皿は、民主党の社会主義的な思想のサンダースと共和党のAmerica First」を唱えるトランプだった。

民主党大会でサンダースが候補者から消えた時、サンダース支持者はヒラリー・クリントン支持者として選挙人登録して投票所に行くことを拒否して棄権する割合が予想以上に多くいたし、中にはトランプ支持に鞍替えする者もいた。

勝ち組、上から目線のestablishment、というレッテルを貼られたヒラリー・クリントンは、
1:共和党に移った宗教的保守層
2:オバマの期待裏切りで減少した民主党支持者
という逆風で大統領選挙を戦った事になる。
それでも得票総数ではトランプを300万票以上も上回っていたが、アメリカ流の選挙制度の壁には勝てなかった。


負け組のためのルール
女性であれ労働者であれ、チャンスは平等、結果は不平等という事が正しいと頭ではわかっていても、女性の権利の実現度合の格差や経済的な成功度合いの格差において、自分が負け組だとわかった瞬間から、チャンスは平等、結果は不平等とは少数の勝者のためのルールであって、多くの負け組にはアンフェアなルールだと感じ始めていた。

2000年以降、彼ら彼女らの所得が全く増えていないことも不満の原因となっている。



海を隔てた欧州でこの数年間で増大してきたのは、
1:反ブラッセル〔反ワシントンと同じ〕
2:反移民
3:establishment
という意識だ。

移民や規制緩和で恩恵を受けるのは勝ち組、establishment、彼らに巣食う中央官僚&政治家であり、中間層以下の有権者の多数層には恩恵がない。


株式や不動産に投資をしていれば多少の恩恵はあるが、その分野でも恩恵の挽回というよりも「持てる者はさらに豊かに」という格差の拡大を生んでいるからだ。
つまり、欧米で同じことが社会現象として起こっているのだ

欧米において、彼ら彼女らは、負け組のためのルールを求め始めた
求めるルールが、世の中の常識に反するとしても多数のためのルールが正しいと思い始めた
少数のためのルール、勝ち組のためのルールは間違いだと思い始めた。

それを競争疲れ、チャンスの提供や挽回する環境整備をすれば十分だ」と一蹴したのが民主党の中道派だったのだろう
逆に、上手に政治的に活用したのが、共和党のトランプだったのだろう。
そして、それが2016年の大統領選挙の帰趨を制する分水嶺となった。

生き物を超えることための新共産主義
しかし、生き物の世界は適者生存だ
それは勝ち組のためのルールだ

人類は動物以上に福祉を考える生き物だという意識の元、勝ち組ルールに修正を加えてきた。
それでも救われない負け組を救う事が正しいのか否か、
20世紀には強力なイデオロギーが出現して救おうとしたことがあったが、それを目指した共産主義は破綻した

今度、失敗を補うべく改善を施した新共産主義が現れるのだろうか?

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