2016年11月29日火曜日

まだまだ続く正社員の苦境

今日11月29日のセミナーのマクロ・セッションで再確認したことは、終身雇用正社員の苦境は自ら招いた自爆なのでまだまだ続くということだ。
 
1:春闘の自爆
春闘の賃上げの基本方針は、物価上昇率相当の賃上げであり、かつ企業業績が悪くても賃上げだった。業績連動を拒否する作戦だった。

それゆえ昨今の物価の低迷に際しては、デフレだから賃下げとは言えず、業績が悪かろうが「雇用を保証しろ!」という作戦を続けてきた。

その結果アベノミクスによって業績が良くなったから「業績連動」と言うわけにもいかなかった。言えば、「じゃあ、将来業績が下がったら!」と切り返されるからだ。

2:業績と無関係の賃金交渉がDNA化した結果、働いて業績を良くするインセンティブが組合員(=正社員)から消えた。そんな不合理に嫌気を感じた若手は、業績連動のリスク・テイク型の企業に移り始めた。

今や、戦後に発展した終身雇用型企業の組合は「既得権にすがりつく正社員の互助会」的な存在に陥っている。

3:一方、非正規社員との所得格差は若干しか縮小しておらず、今後も非正規職員の賃金上昇が正規のそれを上回る状況が継続するだろう。

2016年11月28日月曜日

Googleの戦略の変貌?

ハード・ウェアは安価に入手できる汎用品を大量に利用することで、低コストで高品質のサービスを提供する。

自分たちが得意とするソフト・ウェアでは独自のものを開発して差別化する。
それによって高いマージンを維持するのがIPOしたころの戦略だった。

スマホのOSであるアンドロイドもハードは台湾メーカーなどに設計生産を委託し、スマホのOSの世界シェアでは90%を得ている。

ところが最近動きが変わってきた。
自社設計の
Pixelというアンドロイド・スマホを出してきた。
また、Deep Learningに特化したTensor Processing Units(TPU)も発表した。
多数の技術者を要し、ありあまり資金を抱えれば、何でも自分でできるように思うだろう。
それがGoogleの業績の足を引っ張らねば良いが、と少し懸念している。

スマホやPCはそれ自体で完結するので、独自のクローズされた製品が高いマージンを維持できる可能性が高い、特にシェアが高ければそうなる。

しかし、使い方が固定されたとは言えない
Deep Learningビジネスでは汎用性が重要だと思う。
マイクロソフトやアマゾンに大幅に遅れて、来年の前半に他者が使えるようなサービスを提供すると宣言したGoogleだが、Tensor Processing Units(TPU)を使うシステム汎用性がポイントなのかもしれない。


2016年11月19日土曜日

トランプ大統領登場 (3)世界の政治と経済への影響

(1)US国債は大量発行へ向かう。
減税をする一方で景気刺激の財政出増を増額するのだから、その穴埋めは国債発行になる。国債需給悪化と景気改善の両面から長期金利は上がることになる。
長短金利差が拡大するだろうから、ローンビジネスの利益率が上がるので、銀行は恩恵を受けることになるだろう。
 
USは、景気失速ではなく、景気過熱に向かうと判断できるし、ドルも上がってしまうだろう。それは既に起こっている。

(2)無理して高金利だがリスクの高い新興国債券に投資しなくても金利の上昇したドル債券に投資すれば良いと思う投資家が増えるだろう。

一方、ドル高と金利高でドル資金のファンディングのコストが上昇するので、それに依存する新興国は苦しくなる。
そして新興国に関する懸念は、新興国企業のレバレッジの高さだ。本業で儲かっていても、借金の金利負担の増加が大きいので利益が吹き飛んでしまうかもしれない。最悪の場合は、借金や債券の借り換えができずに「黒字倒産」してしまう可能性もある。先進国の投資家が新興国企業の資金の借り換えに応ずるか否かは、今後は問題化するだろう。
12月に想定される利上げに続き、トランプ新大統領の経済政策が押し上げる長期金利のレベルによっては、投資家の新興国離れが加速するかも知れないし、その時は短期的ではあっても市場のvolatility大幅に上昇するだろう。

なお、1996年以降のロシア&アジア危機による新興国からの資金流出とその結果としての先進国への資金流入は、当時勃興しつつあった米国IT企業への過度な資金流入を発生させた。現在足元で起こりつつある米国への資金回帰が、どこに向かうのかはアンテナを高くして観察したい。規制が緩和されそうな金融分野、中でも不動産の証券化は要注意だ。

(3)これまでの「民主党大統領と共和党議会というネジレ状態によって、何も決められない米国」という状況から、「大統領も議会も共和党だから決められる」状態になった事は大きな変化だ。

一方、株式市場は政治が法律や制度などが変わらずに安定している状態を好む。コロコロかわると長期的な経営計画を立てられないからだ。
その意味では今後は市場のvolatilityは大きくなるだろう。

なお、日中米三か国の政治が同時に安定する状態を迎えるので国際的な懸案事項を解決するには絶好のチャンスだ。

オバマやヒラリーが拘った人権問題は米中間の交渉を暗礁に乗り上げさせたが、トランプの「実務的に落とし所を探るビジネス・ライクな外交政策」は、関税引き上げを脅しとして使いながら「中国を交渉のテーブルに付かせる」効果があるだろうし、同様な事は北朝鮮やロシアにも効果的だろう。

(4)海外の国や地域と民族に対する介入と軍事力の海外展開に関しては、レーガン政権以降に徐々に問い直されてきた。

オバマもその線に沿っているという点では海外展開の縮小路線だった。
そして、トランプの外交政策(=国内重視)も、オバマ時代の「海外ではリスクを取らない外交政策」の延長線にある。言葉では米軍退論という過激な言葉を使っているが、「オバマの海外ではリスク取らない」戦略をさらに進めるものだ。

なお、キッシンジャーの国際戦略に関する下記の5ポイントの指摘が的確だと思われるが、特に3,4,5は重要だろう。

1:同盟戦略とは元来、世界規模で解決不能な諸問題が存在するという事実から発生するものだ。その戦略は同盟相手と米国の国益を反映したものでなければならず、それによってその特別な関係性は定義される。指導者たちは執務室で同盟の評価を重ね、その評価を基礎として(同盟を)修正しなければならない

2:多くの同盟関係はソ連が大きな脅威だった時代に生まれたものだ。今、新しい時代において脅威の内容は違っている。それだけ取っても、すべての同盟は再考されなければならない。新しい現実に立ち向かうため、前向きな意味で再考すべきだ、ということだ

3:我々にはいまだに多大な影響力がある。一方で、我々は他の地域の国々を理解しなければならず、彼らの意思決定についても思いを寄せなければならない。言い換えれば、米国によって彼らの意思は決められない。それは米国にとって新しい経験といえる

4:何がルールになるのかについて同意を作り上げなければならない。そのルールとは『単なる国境』は変わり得るという考え方かもしれない。そして各国間の交渉で、そのルールも修正されなければならない


5:戦後欧州の振興をみれば、常に問題となったのは『すべての国境は神聖で、犯されるべきものではないのか』ということだ。その後、『ヘルシンキ宣言』で『それらのルールは交渉と合意によって変わり得るのだ』と言った。それは重要なステップだ。だから、多くのルールが各国間の関係を規定するという概念は今もとても重要だと思う

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トランプ大統領登場 (2)トランプの政策

トランプの政策は
1:反エスタブリッシュメント、反ワシントン
2:個人・企業に対する減税(=財政赤字拡大)
3:中国などの関税引き上げ、TPP貿易協定反対
4:規制緩和、特に金融
5:オバマケア修正
6:世界の警察官という立場の修正
という特徴を持っている

なお、選挙が終わったので、選挙期間中のアグレッシブな言い方から、お決まりの現実路線への修正が始まっている

1:共和党の主流との手打ちが開始されている
ワシントン、大企業のクソッタレどもをぶっ潰せ!という気持ちはあるものの、制度やルールを変更するには議会の協力が必須であり、上下両院を抑えた共和党の本流と手を取り合うのは素直な作戦だ
2:法人税15%までの引き下げに関しても、下げ幅を圧縮している
3:対中国強硬路線も修正へ向かっている
米中の経済関係は今や深く結びついており、そう単純に喧嘩別れできるものではない。しかも米中関係悪化で景気が悪化すれば2年後の中間選挙で共和党が議会の過半数割れになるリスクもある。

4:金融規制の撤廃も軌道修正
金融規制の完全撤廃の方針から巨大ノンバンクに課されている厳しい資本規制を緩和するなど特定の項目の見直し作業を優先する方向になってきた
トランプの家業に関連する不動産証券化規制の緩和は可能性が高い。


5:オバマケアを破棄するのではなく、部分的な修正に留めて、それをトランプ・ケアだと宣伝する方向が見えてきた。廃止はトランプ支持者を構成員であるpoor whiteに得策では無いからだ。しかし、医療保障からオバマの名前は消したい、という作戦だ

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トランプ大統領登場 (1)ヒラリーの敗因

1.オバマ政権の一員では現状を変えられない
「とにかく変わって欲しい、現状が不満だ」という有権者の意思(=民意)が強かった。
明日のパンの問題(=格差是正)を解決できなったオバマ政権とヒラリーは同類とみなされた。
ヒラリーはオバマ政権の一員だったから。
それほど、オバマ政権の8年間の期待裏切りが大きすぎた

今回のUS大統領選挙で顕在化したことは・・・
1:経済成長が無くなれば、分け前を与えられなくなる。
2:ゼロサム・ゲームのパイの奪い合いが始まり、国民の不満が高まる。
3:恩恵が社会上部の少数グループだけに配分される場合、貧富の差が顕在化して現状の政治体制に反対する社会集団の動員が起こる。
4:貧困層は国民所得の「自分の取り分」を求めて戦い始める。
・・・・という事で、茶会運動やトランプ現象も似たような背景だ。


2.アンチ・リベラルが民主党を離れた
民主党の行き過ぎたリベラル化による穏健保守派の民主党員の離反
特に、かつての支持基盤であった「カトリック信徒、アフリカ系、南部白人、労働組合」の民主党離れは顕著だった。

初の女性大統領という願い(理念)はあったものの、それよりも緊急性の高い問題として経済格差是正、安心して暮らせる社会保障の充実という利益が求められていた。

一方、民主党のリベラル派が目標としてきたマイノリティ出身の大統領、女性大統領は、オバマによって部分的に実現してしまっていた。だから2016年の大統領選挙では女性でなければ!という欲求は後退していた。

女性候補ではあるが、establishment(格差の勝ち組、富裕層)になってしまったヒラリーは失格で、むしろpureに格差是正を訴えるサンダース(男性であったとしても)の方が好ましいと思う人が民主党内部には予想以上に多かった。

2016年の選挙のfirst issueは経済問題だったのだ。人権やマイノリティではなかったのだ。そしてその解決を担当する非establishmentが求められていたのだ

民主党の最大の応援団は労働組合だが、彼らの考え方は「気候変動や妊娠中絶の権利を主張するフェミニズムなどを推進するリベラル派」とは程遠い保守的なで非リベラルだ。明日のパンには関係のないリベラル派の行動には反感を持っている。
だから、1970年代以降に民主党が「頭デッカチのリベラル(環境問題、反戦運動、女性問題にシフト)」にシフトしてしまい、それに違和感を覚えた労働組合員が離反してしまった。

その労働組合内の反リベラル的な人々の不満をトランプがかっさらってしまったのが2016年の大統領選挙だった

そもそも労働者層は、経済的利益の観点からは1930年代のルーズベルト大統領のニューディール政策に代表される大きな政府を志向する民主党に近いが、文化や規範という理念に関しては自助努力と勤勉を説くレーガン政権以降の共和党と親和性がある。

大学のキャンパスを中心としたベトナム反戦運動の時代、「ハード・ハット」と言われるヘルメットをかぶった建設労働者は学生運動に対して「金持ちの息子や娘の勝手気ままな行動」と感じ、ベトナム戦争支援へと傾斜して行った。
彼らは学生が反戦運動に際して星条旗を燃やす行為に怒りを覚えたし、9・11同時テロ後の世界貿易センター跡地にモスクを建設することに反対し、「ムスリム進入禁止」のステッカーをヘルメットに貼って建設作業をしていた。
2016年の大統領選挙においても、ハード・ハットの白人労働者がトランプの集会の多数駆け付けた。

民主党支持者には、口では応援するけど、選挙人登録までは面倒だという政治意識の低い層が多かったかもしれない。
特にサンダース支持者は、格差是正、気候変動、移民制度改革など自分の争点にこだわって候補者を応援するが、民主党の大統領を誕生させたいとか、議会で多数派を得るとか言う点では一体感をもっていない。
その結果、サンダースが民主党の大統領候補にならなかった時点で、選挙人登録をしなかったり、投票に行かなかったりという傾向が見られた。

一方共和党は分裂していたとは言え、White House奪還という点では、民主党よりは一体感が多かった。
この微妙な差が勝敗を分けたのだろう

また、下記は日本では報道されないが、USでは重要な論点である。
日本は無宗教が大多数だから無視している論点だが、人工妊娠中絶の権利をめぐる対立が米国では大きな問題になっている。
カトリック教会は民主党の応援団だが、中絶には反対してきた。
一方、リベラル派のフェミニストは中絶の権利は絶対に譲れないと主張してきた。
敬虔なクリスチャンである黒人層も「同姓愛嫌悪や人工妊娠中絶反対」という思いから、過度にリベラル化した民主党に違和感を持ち続けてきた。

そんな中、オバマ念願の医療保障改革に際して「中絶や避妊を保険適の応対象にするか否か」で、民主党は再度大論争になった。そのために、2016年の大統領選勝利という目標で民主党は一枚岩になれなず、カトリック教徒や敬虔なクリスチャンである黒人層の民主党離れが加速した。

3.民主党、共和党に共通することだが、Anti-establishmentを求める雰囲気が醸成されていた

投票分析を見れば、白人女性、熟年世代、高所得層など、ヒラリーの仲間、同類層に嫌われていた。ヒラリーは、上から目線の高慢なestablishmentの人間だという評価が定着していた。

彼女以外を求める声が大きく広がっていたのだ。

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2016年11月15日火曜日

パッケージ売買の嵐

過去10年で株売買の主流はパッケージ売買になった
個別を調査して投資するのではなく、証券会社が「トランプ・パッケージ」、「資源エネルギー・パッケージ」、「金利上昇恩恵パッケージ」などと銘打って20-50銘柄をパッケージとしてセールスする。
金融機関や運用会社は、個別銘柄の調査をオサボリできるし、5億~10億とまとまった資金を出し入れできるので、パッケージ売買を多用するようになった。
ETFを使った売買も同じである。 ETFの中身がパッケージなのだから。 トランプの当選で証券会社はウハウハだ。 久しぶりに、「トランプ・パッケージを買いましょう、手持ちのパッケージを売りましょう」という入れ替え売買が大活況だ。 手数料はバンバン入ってくる。10-12月期の証券会社の業績は大幅増益でしょう。 パッケージ売買やETFの場合は、業績や中期ファンダメンタルの良し悪しを無視して「みそもくそも一緒くたに売買」することがほとんどだ。 だから、個別株投資家は嵐によってとんでもなく安くなった株を買って儲けたりツレ高でふけあがった株をカラ売りして儲けたりと、儲けのチャンスが沢山やってくるのだ。 嵐の性格を知って上手に利用するのが、スマートな投資家だ。 facebookコメントヘ

2016年11月7日月曜日

2017年を考える_4 : アジア

アジアのリーダーとしての自覚と責任を持たされる苦しみに直面する中国

<中国>
中国は世界初の中央集権国家(秦)以来、広大な国土と周辺地域を圧倒する人口を擁する強力な官僚制中央集権国家として、「自分は世界の中心である」というDNAが醸成され今日に至っている。

過去は、広すぎる国土&多すぎる人口という条件も相まって、周辺諸国を直接支配するには経済&軍事能力が不足していた。

その結果、中国は文化的な優位性で周辺国を圧倒することで精神的に満足する状況だった。それは決して相手を対等とは認めない精神構造だが、現在の中国共産党政権まで面々と続いている。

しかし今や、経済力はUSに次ぐ世界第二位の経済大国になり、核兵器の保有を含め軍事的なパワーは周辺国を圧倒できるレベルに到達した。
周辺国に対してUSなどの大国が、対中国で同盟的な実力行使的な動き(=現実の行動)をしない限り、中国の実効支配はジリジリと地理的な拡大をするだろう。

ベトナム戦争での事実上の敗戦を機に、インドシナからUSが抜けた(撤退した)ことによって生じた「権力の空白」を、伸び盛りの中国が埋めるのは、歴史的に妥当だと考えるべきだろう。


その過程で、中国がアジアのリーダーとしての自覚と責任感を持つのか、そうならずに大きな駄々っ子のままなのか、習近平の10年間はその方向性を決する10年間になるかもしれない。



<インド>
中国とアジアのリーダーを競った(=名誉の重視)マンモハン・シン首相から実利を追求するナレンドラ・モディ首相にバトンタッチして以降、国内経済発展に注力する姿勢は評価できる。
モディ首相は「インド版鄧小平」と後年評されるかもしれない。

<ロシア>
複雑なロシア
欧州にあこがれるも、モンゴルの専制政治のDNAを吸収した結果、支配層が自ら「社会をトップダウン的に民主化する」インセンティブを持たず、かといって欧州のような「商工業の発展によって新興富裕層が生まれて、彼らが民主化を要求する」ことも起こらなかった。

その後、共産主義ソ連とその崩による混乱時代(エリチィンを含む)、そしてプーチンの長期権力時代と変遷したが、一貫して非民主国家、独裁国家であったと判定できる。

歴史的に数多くの異民族の侵略を受けて来たため、被害妄想的な精神構造になってしまったロシアは、 弱い自国(=と自己認識している) を守る ためには領土に関して一切の妥協をしない強硬な態度に固執するようになっている。

<日本 VS ロシア>
北方領土問題は、ロシアの立場になって考えると論点が明確化する。
1:平和裏に領土問題が解決するには、金で買い取るしかない
2:過去のいきさつ、歴史的経緯よりも、現実の実効支配が重要だ
3:プーチンは主権を放棄しないと言っている、買取価格の引き上げの為と言えども

日本政府としては、「頑張ってます!」というポーズを主にしつつ、経済開発は実利を取る経済計算に立脚することが妥当だろう。

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2016年11月5日土曜日

2017年を考える_3 : US

覇権パワーの縮小国内有権者の内向き志向にUSは悩んでいる

 USはゆっくりとFalling Angelになりつつある。
かつては自らを「selected special」と位置付け、民主主義と資本主義を世界に布教する義務感に燃えていた。
その理念を世界に布教する意思実践力のギャップに悩んでいる



経済力の世界シェアの縮小財政赤字の増加により、覇権維持のための対外的な支出可能額の頭打ちに直面している。

同時に、「こんなにUSはみんなの事を思って頑張っているのに、何故世界はUSのように考え行動することができないのか?」と苛立っている。

USとそれ以外は、国の実力やファンダメンタルが異なっていることに留意しなかったのがが過去のUSだ。
豊かな資源に恵まれた土地をほぼ無償でインディアンから獲得したという有利な条件を他国や他地域、他民族は持っていない

アメリカ人だって、欧州にいたままだったら、そんな大口を叩けないハズだ。

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成長率とPER : 成長株の株価推移の特徴

景気や経済対策にあまり影響されずに淡々と業績を増加させる企業が、もっとも安心して保有できる。

それが成長株投資の醍醐味だ。

(1)そんな成長株は下図のような値動きをする。




時々悪材料が出てドスンと下がるが、悪材料が織り込まれると、会社のファンダメンタルに変更が無い限り、また淡々と上昇を続ける。

長期的に観察していると、上図に示されたように、上昇の角度が同じ平行線に沿って株価が上がって行く。



(2)すべての成長株に共通すること=地球よりも大きくなれないという天井が存在する。

USで生まれ、欧州に拡大し、アジアも席巻する。
業務内容も広がる。
縦と横が同時に広がって面積が大きくなるような格好で業績が増加す

どこかの時点で、縦と横の拡大するスピードが鈍化する。
(例:毎年30%成長が、25%成長に鈍化する)
いわゆる成長率の鈍化がやって来る。



成長率の鈍化が投資家に認識されるとき = ドスンの下げが来る
その後の株価は回復して、新高値を更新するが、過去ほどのペースではなくなる。
上図に示されたように、上昇の角度が下がるからだ。

換言すれば、PERが下がる
(例:PERが、35倍→27倍に下がる)



(3)成長率とPERには、下図に示した容易に、「正の相関関係」がある
しかし直線状に分布するのではなく、下図青い×印のように大きな幅の中に分布している。




しかも、相場全体の楽観度、悲観度の変化に従って、分布ゾーンが上下に変化する。
だから、適正株価の判定は動的に判定しなければならない

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2016年11月2日水曜日

2017年を考える_2 : 欧州

欧米:キリスト教民主主義、 中国:無宗教社会主義市場経済、イスラム:宗教至上主義

欧州
国家・国境の尊重:尊重する、ヴェストファーレン体制の欧州
欧米(国境不可侵)>中国(核心的利益があれば国境は無視できる)>イスラム(宗教によって世界が統一れるべし)

世界選挙:全国区有権者と考えるか、小さな地域代表と考えるか
ムスリム:15億人、 キリスト教徒:22億人、 ヒンズー教徒9億人
中国:14億人、 イスラム地域:17億人、 欧米:11億人、 インド:13億人

国とか国境とか言う概念(=内政不干渉)が現代的な意味で出現したのは、1648年のヴェストファーレン条約
それ以前は、王侯貴族は近隣や遠隔地にバラバラに分散した支配地域を持ち、婚姻関係で支配権が頻繁に変化していた。
その後フランス革命とナポレオン戦争を経て、欧州は現代的な国民国家という形態に落ち着くが、歴史の必然ではなく、たまたまこうなってしまった、と解釈するのが妥当

USが派遣を握る前、第一次世界大戦前までは欧州が国際政治を動かしていた。
二度にわたる欧州の戦乱で政治と経済と国土と国民が疲弊し、死んだ兵士がもたらす労働者不足を旧植民地からの移民に依存せざるを得なかった欧州が現在抱え込む移民&難民問題は、解決に数世代を要する大問題だろう。

移民&難民は、逃げ出す国の政治経済が好転しなければ止まらない。
死の恐怖、迫害の危険から逃れる人々は必死だ。
地続きの中東と欧州は数千年前から国境など無いかのような往き来をして来た、平和裡であれ暴力的であれ、それは両地域の
DNAだろう。



両大戦で疲弊した欧州の復活を目指して欧州諸国は「国家連合的なEUの拡大」戦略を採用してきた。
西欧連合から始まって中東欧を取り込み、今やロシアの国境まで拡大した。

しかし、伸びきった戦線の兵站が破たんして撤兵を強いられるがごとく、
新規の加盟国に対する甘い蜜であった財政援助の資金は消えてしまい、旧植民地である中東地域の不安定を輸入してしまう状況(=Job&Social Security目的で流入する移民&難民)に直面し、加盟国内の意思統一は破たんしてしまった。

そもそも複雑な民族問題や歴史問題を抱えている欧州だが、加盟国が多くなると「大同小異」でまとまることが困難になる。
「大同のメリット=共通の利益」よりも「小異のデメリット=各国の事情」が大きくなってしまう。
小異を我慢する代金としての補助金も枯渇傾向なので、ますます困難な状況が予想される。

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2017年を考える_1 : 中東

国際政治上、地政学上の重要地域は、(1)中東、(2)アジア、(3)欧州

中東
オスマン帝国の政治権力が縮小し、その穴をUKが埋めた。
第二次世界大戦後UKの経済力の衰退で中東地域を支配できなくなりUKが撤退し、その穴をUSが埋めようとしたが完全にはできなかった。

その背景は、
1:
USは民族自決の建前から欧州の植民地の独立を支援していた
2:エジプトに代表されるように、第二次世界大戦後の米ソ冷戦構造を利用した「米ソを天秤にかけるコウモリ作戦」が頻発した。
3:イスラエル(ユダヤ教国家)の建国に加担したUS(キリスト教国家)という立場が、王権や独裁政権の正当性をイスラム教に依拠するムスリム国家の反発を生み続けた
4:USとしても原油の利権を除けば深入りしたくなかった。朝鮮戦争に続きベトナム戦争という負担を抱えていたからだ。

中東の王権や独裁政権自身も、油の富を一族で独占することに主眼を置き、その一部を不満爆発防止目的でバラまくことで政権を維持してきた。政治体制の民主化や経済の高度化には興味がなかった。

統治の正当性を宗教に依存したが、これは人間社会の発展段階では
(1)初期段階(無知による神秘性の崇拝)、
(2)意図的な盲目段階(情報を隠し、理性を封じ込める)
という状況で発生するが、現代の中東は(2)である。

欧州の中世における「宗教権力>世俗権力」の時代に類似するが、両者に共通するのは「宗教を利用して統治」する、もしくは「教権と世俗権の二重構造」である。
欧州では経済の発展に伴い世俗側の力が増したこと、印刷の発展により情報が流布したことで教会の神秘性が低下したことで、「世俗権力>教権」のトレンドが形成された

2017年現在、サウジでは油依存からの脱却が計画されているが、「あまりにも安易に得られる果実」から「努力と節制を要求する他産業への転身で得られる果実」への転換を望むものは少数派にとどまっている

 

イスラム教は最後に出現した宗教であり、政治経済と宗教(ムハンマド時代は生活規範というのが妥当だろう)を一体化させるべしという特異な性格を持った宗教として登場した。
当初は旧来の宗教を信仰していた他の部族長も「イスラム教の採用が自分たちの統治に有利」と判断するや改宗していった。
国や部族という区切りを否定し、世界があまねくイスラムの神の元に統一されるまで戦いを継続するという教えの元、7世紀~10世紀に急速に支配地域を拡大して今日に至っている。
ISなど過激武闘派の精神的根拠は、この世界統一にあり、中東諸国は正面切ってISの主張を否定できないジレンマを抱えている。


歴史的には内部矛盾、自己矛盾を抱えた国は弱体化&崩壊への道を歩んだ。