2016年7月27日水曜日

中国の民主化 (3) 近代化と民主化は別の概念

1:近代化と民主化はセット案件ではない
(1)経済成長と個人主義が結びついた欧州
経済の近代化(=工業化の進展)が進み、国民が豊かになる。豊かになった国民には、「1:失うと困るもの(財産権)、2:財を創出するための約束(契約履行)、3:生活の基盤(民主的な社会)」を失うことに抵抗する考え方が芽生えた。
それが最終的には、王権を制限する対案としての「代表制議会主義」の制度を生んだ。

(2)まずは経済成長が必要だが・・・
経済成長が民主主義をもたらすわけでは無いし、民主主義があっても、経済成長がもたらされるわけでは無い
統一した強力な国家と良い政治があれば経済成長がもたらされるが、統一した強力な国家の行う政治が民主主義とは限らない

現在でも、近代化は有っても民主化が無い国は多く、権威主義的な政治体制の元での経済の近代化が多い。むしろ、権威主義的な支配者の下で経済の近代化を果たした後に、
豊かになった国民が政治意識を高めると民主化に進む可能性が高まると考えるのが妥当だろう


(3)経済成長が自立した個人を生み出した
個人主義は民主主義の成立基盤と言われる。
個人主義が発展するためには、自立した個人が増加することが必要だ。
自立した個人とは、これには相応の収入、相応の生活をする個人である。

経済力の無い依存性の強い個人が有権者になれば、衆愚政治に陥りやすい。
民主主義の基盤となる
個人主義は、社会的な責務を果たせる人間が生み出す。
個人主義が発展しない場合、全体主義、ファシズムに陥る

(4)何故、欧州で法秩序&個人主義が根付いたのか? 
キリスト教が、その教義が正しいか否かは別として、王権をも制限する一定の秩序を社会に持ち込んだことは大きい。

王権であっても侵害できない
個人の財産処分権(=法秩序の下での財産の自由な処分)という考え方は、王権の意向に左右されずに財産を教会へ寄進させる事が当初の教会の目的だったが、それが社会レベルの個人主義化を促進させた。

その結果、欧州キリスト教世界では、政治、社会、経済において、法の支配・財産権・契約履行の考え方が根付いた。